2021年追記:この記事掲載当時(2016年)は、日本国内で液体ミルクを販売する事ができず、文中でも「日本国内での液体ミルク製造販売を求める署名ページ」へのリンクを掲載していた。その後2018年に厚生労働省により省令が改正され国内販売が可能になり、翌年3月から江崎グリコ、明治から液体ミルクの販売が開始された。(やったね!)(乳首もついてて開けてそのまま飲ませられるタイプでは無いけど…)というわけで、外出時などは液体ミルクを使用するのがオススメだが、コストと保管スペースの点では粉ミルクの方にメリットがあり、粉ミルクから完全に移行するのは難しいだろう、という事でこちらの記事の内容もまだまだご活用ください。
離乳食の外食化が可能か試してみようという話になって、近所のデパートのベビールームで子に離乳食とミルクを与えてみた事がある。日曜日だったので私と同様にミルクを作って与えているお父様も多かったのだが、哺乳瓶を水道水にあててミルクを冷まし、中の液体を腕に垂らして温度を確認する…という作業を繰り返しているお父様が多く、なかなか時間がかかる面倒くさい作業のように見えた。そこで、冷ます作業が必要ない私の「最速」のミルクの作り方を書いておきたい。
まず、粉ミルクは赤ちゃんの体温から40℃くらいの範囲に調整すべきものだと思っている人が多いのではないだろうか。どこで憶えたのか思い出せないが、私もそうだった。実はミルクの温度は室温ぐらいで問題ない。欧米などでは「液体ミルク」と呼ばれる調乳済みのミルクが販売されている(参考:日本国内での液体ミルク製造販売を求める署名ページ)。これはキャップを開けると使い捨ての乳首が露出してそのまま授乳ができるという大変便利な商品なのだが、特に事前に温めよといった指示はなく、みな保存している室温のまま与えているそうだ。そういった事から、冬の室温や外気温では冷たすぎてお腹にやさしくない場合があるだろうが、概ね20℃台以上であれば問題ないと考えられる。一方、ミルクの温度を37〜40℃に調整しようとしてしまうと、これは許容できる温度帯の中ではかなり上限に近いため、ちょっとブレるだけで「熱すぎる」ミルクができてしまう。そこで、ミルクの温度は30〜35℃にする事を目標として調乳したい。これなら多少温度がブレても、だいたい25〜40℃の範囲におさまるはずだ。
実際の調乳手順(でき上がり量100ccの例)はこうだ。
1. 湯を沸かす(70℃〜90℃程度に調整する)
2. 哺乳瓶に粉ミルクの粉末を入れる
3. 50ccの湯を哺乳瓶に注ぐ
4. マドラーで混ぜ粉末を溶かす
5. ペットボトルから冷たい水をそそぎ100ccに調整する
6. マドラーで混ぜて温度を均一にする
7. (心配なら)水面の温度を赤外線温度計で測る
8. 哺乳瓶に乳首をセットして完了
詳細な説明とするため工程の数は多くなったが、工程 1 の「湯沸かし」を除き、「哺乳瓶に水道水をかけて温度が下がるのを待つ」等といった「待つ」工程がない。このためこの手順を使えば非常に早く調乳ができる。
工程 1 では、かならず湯温を70℃以上にする。これは粉ミルク中に存在する菌を殺菌するために必要な温度とされている。デパートのベビー休憩室の給湯器はだいたい80℃台に設定されているためそのまま利用できる。一方、温度が高すぎると今度はミルク中のビタミンやタンパク質が変性しやすく、栄養価が低下するとされている。湯沸かしポット等を使わずヤカンやティファールで湯を沸かす場合は、沸騰させた湯を計量カップなどに一度移し変えると丁度良い温度まで下がり、待ち時間を減らせる。
工程 2 は、缶からミルク粉末を測り取る作業が意外と手間になる。湯を沸かす必要がある場合は沸くのを待つ間に測り取りを行う。また100cc単位での調乳しかできなくなるが、100cc分づつ個包装になった粉ミルクパックを使うととても速くなる。キューブタイプの「ほほえみ」は一見速そうだが、キツキツで引っかかりやすい個包装からキューブを取り出したり、キューブを分割する作業が手間取りやすく、溶かすための時間も粉末タイプより必要となるため時間がかかる。(毎回個包装内容量の200mlづつ作る場合には問題ない)
工程 5
ではペットボトルから「冷たい水」を注ぐ。ペットボトルの水はほぼ無菌なので、赤ちゃんでも加熱せず飲用できる。具体的には「サントリー天然水」などは硬度が低いため粉ミルク向けで、またどこに行っても簡単に入手できるので便利である。多少の硬度でも気になる人向けには「赤ちゃんの純水」などのベビー用純水が赤ちゃん用品店やドラッグストアで販売されている。自宅で使う場合は開封前から冷蔵庫に入れておくとできあがり温度が安定する。封を切ったペットボトルはどんどん細菌に汚染されていくので、キャップの内側や飲み口は絶対に手で触らない様に注意し、必ず冷蔵して48時間以内に使い切る。子供が新生児の場合は24時間経過したペットボトルの水は捨てるか加熱用途にすると良い。開封から使い切るまでの時間が長くならない様、ペットボトルは必ず500ml以下のサイズを購入する。
工程 4, 6 では哺乳瓶を振らずにマドラーで混ぜる。一般的に哺乳瓶は振って混ぜる物、というイメージがあるが、これをすると乳首の孔や吸気口にミルクが入り込む場合があり、ミルク漏れ事故の原因となる。マドラーを洗浄し清潔に保つ手間が生じるが、ミルク漏れしないというメリットはこれを上回る。また工程 7 で温度を計るためには、この時点ではまだ蓋や乳首をつけない方がスムーズである。
工程 7
では温度を赤外線温度計で測る。従来の「腕の内側に1滴垂らして確認する」方法は判断が曖昧になりやすい上、なかなか乳首からミルクが落ちず、乳首を腕に擦り付けてしまう親の姿も散見され衛生的でない。赤外線温度計は非接触で温度を測定できるため衛生的で正確である。ただし液体は液面から冷めていくので、ミルク全体の温度を知るために必ず混ぜた直後に測定する。哺乳瓶に貼り付けるタイプの温度計は哺乳瓶外側の温度を測っているに過ぎず、これが内部の液温と平衡するまでにはかなりの時間が必要となるためお勧めできない。水を足した時点で確実に安全な温度(20℃〜40℃の範囲)に調乳できている自信がつけば、この測定は省略できる。拙サイトの「調乳温度計算機」を使えば、湯と冷水の分量比のだいたいの目安を計算しておく事ができる。
説明が長くなったのでポイントだけ抜き出すと以下の様になる。
・ミルクの温度は20℃台になっても問題ない。安全な30〜35℃を目指して調乳する。
・ペットボトルの水を足すことで冷ます工程を省略する。
・哺乳瓶は振らずに、マドラーで混ぜる。
・温度を計る必要がある場合は腕に垂らさず、赤外線温度計を使う。
お読みの皆様の調乳方法と比べてどうだっただろうか。よい速い方法をご存知の方はどうかご教授いただきたい。最後に文中に登場した商品のアフィリエイトリンクを貼らせていただこう。
2021年追記:子供が大きくなってとっくに買う必要も無くなっており、最新のミルク・トレンドをフォローできないのでリンクは全部削除しました